最新更新日:2024/04/25
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2月17日(土)13:30より副島 孝先生によるセミナーを実施しました。

 2月17日(土) 13:30〜15:30に、201教室において実施しました。
 講師に学び合う学び研究所シニアフェロー副島 孝先生をお招きし、〜授業のための社会的構成主義〜 − なぜ私たちは一斉授業から抜け出せないのか?−をテーマに行いました。

 今回のセミナーには、13名の方の申し込みがあり和気藹々とした雰囲気の中で実施できました。セミナーのスケジュールは以下の通りです。
第1部 今日考えたいこと
〇 自己紹介と今日の話題をテーブルで聴き合う
〇 授業研究会で出会った授業からの学び
〇 大きな影響を受けた3つの実践から
 テーブルでの協議
〇 社会構成主義および関連する理論を学ぶ

− 休 憩 − 

第2部 社会構成主義をどう学んできたのか
〇 テーブルでの協議と共有

 最初に、副島先生より、スーパーバイザーとして訪問されている学校の様子をお話いただきました。その中で「なぜ私たちは一斉授業から抜け出せないのか?」という問いが示されました。
第1部 今日考えたいこと
〇 私自身のテーマへの考え方が変化した
・社会的構成主義を知らないから、いつまでも一斉授業をやっているのだ
・「構成主義を知れば授業が変わる」という考え方自体が、間違いの元なのか
・「なぜ一斉授業が変わらないのか」を考えなければ、授業は変わらない!
・果たして、私たちは授業を変えることができるのか?
上記のテーマに込めた思いとして、教育学者の常識となっている「社会的構成主義」を理解してもらいたいと考えていたが、よく考えると、大学の教育学の授業でも、説明が多く、せいぜいグループ討議やリフレクション・シートでお茶をにごす授業が一般的であるのではないか。
〇 自己紹介と今日考えたいテーマについて各テーブルで聴き合う

〇 授業研究会で出会った授業からの学び
 K小学校3年生の道徳の授業について内容を紹介いただきました。
 資料・板書(登場人物、発問、子どもの発言が見やすく書かれたもの)の映像を確認しながら、子どもの学びの様子を話されました。学び合いのパイロットスクールであるその学校においても「やはり一斉授業になっていた」という印象を語られました。
〇 大きな影響を受けた3つの実践から
□斎藤喜博の「出口論争(ゆさぶり発問)」「そんなところは出口ではない」と斎藤の介入に、子どもたちは自分の正当性を主張し、激しく反論する。斎藤はそれを受け、「同じことばでも解釈は一つだけではない」自分は正しいと言う。自己否定された子どもたちは一時的にしょんぼりするが、真実を求めて必死に考え、様々な角度から議論する授業。
□板倉聖宣の「授業書」〈力と運動〉〈慣性の法則と放物運動〉
〈問題〉 走っている電車の中でビー玉を落とすとどこに落ちるか?
〈予想〉 ア 真下よりうしろ  イ 真下より前  ウ 真下
〈意見・討論〉ある子どもの発言「あの・・・、地球はものすごい速さで動いているから・・・、たとえば、校庭でジャンプしても、またもとの場におりてきます。だから電車の中でも同じだと思います。」という子どもの発想のおもしろさを紹介
□有田和正の「教材開発ネタ論」授業「一寸法師」の授業記録から(『子どもの生きる社会科授業の創造』)
教師 (あらすじの確認の後)一寸法師は都へ何をしに行ったんだろうね」
子ども1…「姫をめとる」ということは「天下をとった」ということだと思います。
子ども2「小さな体」というのは「貧しかった」ということで、 …秀吉じゃないかと思います。
子ども3 「わたしはね、信長とか秀吉とか家康とか、みんなだと思うんですね。一寸法師というのは、武士とかによってつくられたお話じゃなくて、庶民の間でつくられたお話だと思います。信長とか秀吉とか家康とか、そういう立派な人というか、選ばれた人というより、みんなまとめて夢みたいなお話をつくったんだと思います。」
子ども4「 話は変わるけど、なぜ一寸法師というのは京都へ行くのに、ちゃんと地面を行かないで川をのぼって行ったのか?」(笑い)
以上、私が授業づくりで影響を受けてきた代表的な3つの実践を紹介しましたが、今から「優れた授業は昔から子どもが作る授業だったのに、気がつくと一斉授業に陥っていることが多いのはなぜだろうか?」テーブルで話し合ってください。

〇 テーブルでの協議 10分
 
〇 社会的構成主義の「知識観」
従来の学習における「知識」から「深い学び」における「知識」へ転換が必要
・自らの活動から新しく生まれるもの
・学びによって創造し再構成されるもの ・生きて働くもの
〇 きちんと「社会的構成主義」の理論に触れたのは、2009年の柴田ゼミの英語論文講読のとき “Methods in Educational Research”:No Child Left Behind Act(NCLB落ちこぼれゼロ法)2001 後の教育の説明責任運動後の状況の中で、教育研究の方法を書いた書籍から

 
  ― 休 憩 ―

第2部 社会構成主義をどう学んできたのか
〇 佐藤学「学習論の批判ー構成主義とその後ー」(『学びの快楽』世織書房、1999、所収)学び合う学びに生かすヒント
・構成主義学習論の系譜
・構成主義学習論の課題
〇 2つの構成主義
・心理的構成主義
・社会的構成主義
〇 「因果性」で説明される授業
〇 「相互性」の場としての授業
〇 「知識」=「事実」という思い込み 今井むつみ『学びとは何か』 2016 岩波新書
〇 知識観の発達
〇 科学的思考・批判的思考
〇 「学び」に関する5つの考え方 『協働する探究のデザイン』藤原さと,平凡社,2023,p42
〇 人は一つの主義だけで生きているわけではない
〇 真正の学びをデザインする:デザイン思考へのイノベーション「技術的実践」と「文化的社会的実践」

〇 テーブルでの協議と共有
社会的構成主義および関連する理論を(いくつか)学びました。次の点について、話し合ってみましょう!
・納得できる点は何だったでしょうか?
・納得できない点はどこだったでしょうか?
・自分の授業(授業研究)に生かせると感じましたか?
・理論として納得できても、実践(自分の授業)には生かせないと感じましたか?

〇 まとめにかえて −社会的構成主義を知った後の私自身の学び−
・21世紀の教師は、教えの専門家から学びの専門家へ
・授業プランの作成と検証から、学びのデザインとリフレクション
・話し合いではなく、聴き合い。教え合いではなく、学び合い。
・授業研究・実践の中心は全国規模の研究会ではなく、それぞれの教室
〇 「個別最適化」に思うこと
・朝日新聞(2024.1.27土曜be)で、「カスハラをしない」という記事を見た。
 私流にまとめると、「マウントを取る」タイプが多いということ。
・そこで感じた「新聞の一覧性」:ネットでのニュースや記事は、自分がよく見る傾向中心の独自なもの。つまり、他の人が見ているものとは違うもの。
・「個別最適化」は50年前の教育研究の課題だった。
〇 「啓蒙」というキーワード
〇 私が授業を観る視点 −協同的学びにおける探索的会話(exploratory talk)と援助要請(help seeking)−
〇 「『助けて』が言えない 子ども編」日本評論社2023生越照幸より
・本当に助けが必要なのは、実は大人だですね。教師は学校内で学んでいるだけでは十分学ぶことができない。先生方は学校外で困っていることを共有できる場とつながりが大切です。副島先生からの最後のメッセージは「孤立しないで、つながろう!」の言葉で締め括られました。

参加された方からの振り返りを紹介します。
◆今日の講座で学んだ中で重要だと思ったことは、知識観の転換です。
自分は数学なので、社会的構成主義で他者の意見に触れることで理解を深めていくよりも、正しい論理構成を理解させることに重要性を感じている。数学での学び合いは教え合いになりがちだが、論理の理解や解法への疑問について探索的会話を行わせるとよいとヒントを得た。個別最適な学びは、問題が解けなかったり間違えたりした原因を確認させるように誘導したり、できるようになったら一段難しい問題を与えたりすることや、(代数や幾何などの)それぞれが興味深い分野を深めさせること、と解釈していたが、興味に基づく個別最適と捉えると、インターネットで履歴に基づいて偏ったレコメンドが来ることに近くなるというのは、自分が持っていない発想だった。
◆今日の講座で学んだ中で重要だと思ったことは、深い学びにおける知識です。
これまで知識というと、決められた語句の意味を理解し覚えておくべきものとか、テストや質問に対し分かりやすく説明できるものと思っていました。よって、きちんと説明できなくては知識とは言えないという概念を持っていました。実際、そういう授業を目指してきたように思います。しかし、お話しの中で、知識は与えられたものではなく、自他との深い学びの中で、新たに生まれるもの、再構成される、生きて働くものということを学びました。そこに、授業の意味があることを改めて気付くことが出来ました。知識をそのように考えると、デザインは「状況との対話」から生まれるとか、今、考えたこと、聴いて考えたことで生まれる「探索的会話」や「援助要請」の意味や大切さがストンと落ちました。教師主導の知識伝達型授業が岩盤のようにある自分にとって、授業をデザインする上で重要な、心がけるべきことを学ばせていただきました。ありがとうございました。

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