最新更新日:2024/04/25
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12月9日(土)13:30より畠山大二郎先生によるセミナーを実施しました。

 12月9日(土) 13:30〜15:30に201教室において実施しました。
 講師に愛知文教大学准教授 畠山大二郎先生をお招きし、教科書の中の平安文化を捉え直す〜古文 絵巻 装束〜 をテーマに行いました。

 今回のセミナーには、中・高等学校の先生方、研究者、学生と多様な立場の方が集い実施できました。

第1部 古文を読み直す
 〇 「枕草子」初段「春はあけぼの」を読み直す
  ― 休 憩 ―
第2部 古文と絵巻
 〇 絵巻物の読み方
 〇 「竹取物語絵巻」
第3部 古文と装束
 〇 装束に触れる

 最初に、参加された方の自己紹介からはじまり、畠山先生の自己紹介をお聞きしました。畠山先生には、貴重なコレクションをお持ちいただいた、実際に手に取らせてもらうことができました。枕草子の写本や絵巻物の複製、さらに実際に羽織らせていただいた装束のコレクション、今では近世の着物にも手を出しているとのことで、いまだに貯金というものを手にしたことがないとお話に、会場が沸きました。(笑い)今日は、下記の3点について文化的に読み直していきましょうということでスタートです。

第1部 古文を読み直す
〇 「枕草子」初段「春はあけぼの」を読み直す
 冒頭の、解釈には現代でも論議が続いているとのことです。そこで、国文学研究資料館蔵(能因本)を音読された後に、翻字(現代語に訳したもの)を見せていただき、その比較を指摘してもらいました。写本による誤写(意図的変換)がおきていたり、一行欠落している部分があったり、この場合は誤写ではなく改変が起きていることに気づくことができました。
 原典と教科書の古文を比較してみると、冬は(つとめて:欠落)雪のふりたる・・・・など大変多くの改変が起きていることがわかります。
 写本には三巻本、能因本、堺本、前田家本の四系統があるなど実に多様であることを教えていただきました。それぞれの表記が揺れ動き違っている。清少納言が著したものに一番近いのが、三巻本ではないかとされており、教科書に使われているそうです。一番古く写本されたのは、前田家本であり、実に読みやすい。その読みやすさがおかしいのではないかとの解釈があり、書写する人が、新しいものを造ってきたのではないかと言われています。
 三巻本が教科書に採用されたが、校訂本文は、原典から1⃣濁点半濁点をつける。2⃣反復記号を変換する。3⃣漢字変換を行う。4⃣句読点をつける。などの改変を行っています。

<句読点1> 春はあけぼの。やうやうしろくなりゆく山ぎは、すこしあかりて、紫だちたる雲のほそくたなびきたる。
<句読点2> 春はあけぼの。やうやうしろくなりゆく、山ぎはすこしあかりて、紫だちたる、雲のほそくたなびきたる。

〇 上記の二文を比較して句読点の位置による違いは何か?をテーブルごとに聴き合いました。しばらく、聴き合った後に全体共有をしました。

●畠山先生のコメント □参加者のコメント
□ 疑問があるのですが、句読点や読点について、我々が行っている授業分析では千分の1秒止まれば句読点、数秒止まれば読点。また、文章の意味から読点をつけたのか。など、どういう基準があるのでしょうか。リズムによって違ってきますよね。
● 当時も音読して鑑賞していました。「なむ」は一旦止まるところにはいる。「たる」は、続くのか続かないのか、言葉の意味の解釈で違ってきます。今回は、私が勝手に打ってみました。それでは、各テーブルの読みを聴いてみたいと思います。
□ 句読点1は、だんだんが全体にかかり、白くが山ぎはにかかかる。紫だちたる雲が細くたなびいている。句読点2は、だんだんが白くにかかる。すこしあかりてが山ぎはにかかる。と読みました。
□ 句読点1は、前のテーブルと一緒です。句読点2のだんだん白く、紫だちたるは独立している。など、句読点2に関する解釈にはテーブルごとに多様性がみられました。
● みなさんの読みをお聞きすると、句読点1がだいたい定まっていますね。ということは、こちらが多く使われいる理由になりますね。「すこしあかりて」の「あかりて」がひらがなになっています。わざわざ「ひらがな」にしているところがあります。漢字にすると「赤」は色彩「明」は状況が考えられますが、説明しきらない「掛詞的な表現」になっているのです。
□ 少しわかりにくいのは、句読点1は絵に表現できるように思います。句読点2は動画的な状況が浮かびます。こうしたことを文学では問題にしないのですか。
● 時間の経過は大切で、平安のころには、こういう表現を「うつろふ」=(移、変化する)といいます。変化する様をどうするかということから絵巻物の表現がうまれました。古今和歌集は四季を扱い時系列に和歌をまとめております。また、恋の表現にも変化する想いを詠んでいます。

  ― 休 憩 ―

第2部 古文と絵巻
〇 絵巻物の読み方
 美術館では、絵巻物を広げて横に長く展示をすることが多いですが、あれは展示会ならではの見せ方です。本来、鑑賞者は肩幅に絵巻物を広げて鑑賞するため、右から左へ画面が登場してくることになり、画面の動きが、空間的・時間的展開を生み出します。
 畠山先生が実際の絵巻物を手に取り説明され、各テーブルでも実物を巻き取りながら手に取る貴重な経験をすることができました。
 画像では、紫式部絵巻の場面を読み取っていきました。この人物は酔っ払っていますよね。ということは宴会をしている情景だと読み取れます。視点の移動にコマ割をつけると漫画になりますね。伴大納言絵巻の一場面を拝見し、ケンカしている子供に割って入った大人がおり、次の場面では相手の子どもを蹴飛ばしている。同じ場面に異なった時間が右から左に描かれる文法を「異時同図法」と呼んでいます。その他に「引目鉤鼻」「吹抜屋台」「逆遠近法」源氏物語絵巻では、奥に座る帝の姿を大きく描き、奥に行くに従い広がって表現する逆遠近法がつかわれています。これを絵巻物の文法と呼んでいます。
〇 「竹取物語絵巻」
 いろいろな絵巻が描かれています。かぐや姫の昇天の場面について、立教大図書館蔵本では、かぐや姫の邸内を中心に描いていますが、国学院図書館蔵本では、武者たちがかぐや姫を月に戻さないため阻止する武者が描かれている。比較すると、大きな違いがあります。
 現在では、Colbase(国立博物館の画像データベース)では画像を公開しています。ぜひご覧くださいと紹介されました。

第3部 古文と装束
〇 装束に触れる
 装束とは、衣服・装身具の集合体や、宮殿内部の室礼(しつらい)、武具や馬具の装置など、幅広いものを指す言葉です。
 こうした装束たちは、有職故実によって細かな規定が存在していることを紹介していただきました。持参された装束を参加者を代表した女性がモデルになり、かさね着を実際に体験することができ、美しい姫が誕生しました。

参加された方からの振り返りを紹介します。
◆今日の講座で学んだ中で重要だと思ったことは、改変です。
今回のセミナーでは、面白いと感じたことや新しく知れたことがたくさんありました。
教科書と能因本を比較して見た時に、表現の仕方が違っていたり、一行抜けていたりなど今まで読んできたものとは違う部分が多くありとても驚きました。またこのことが、誤写ではなく改変されたということも知ることができました。句読点の違いでは、教科書の方が意味定義がしやすく1つに決まり、他の例では様々な意見が出たことから教科書の方は教えやすさや分かりやすさがあり学校向きだなと思いました。全体的にとても興味深く楽しかったです。また、たくさんの刺激をもらい、新しいことを多く知ることができました。ありがとうございます。
◆中学校2年国語の「春のあけぼの」の授業を見たことがありますが、生徒達は言葉を手がかりに、句読点のあるなしを頼りに、何とかして情景を思い浮かべようと頑張っていた姿を思い出しました。その生徒達と同じ立場で、一生懸命読み直すことができたのはよかったです。ところが、そのもととなる本が何種類もあるとは思いもしなかったことで、実におもしろく興味深かったです。確かにコピーのない時代、よかれと思って書いた変更が後々大きな違いを生むというのはあり得る話しで、教科書はたくさんの本の中で、最もブレが少ないものというのは、なるほどと思いました。また、絵巻は静止画しかない時代に少しでも動画的な要素を加えたもので、最大の工夫であると思いました。装束についても、本物を目の当たりにし、歴史的な背景やその時代の工夫を知ることができて、それぞれの「深さ」を感じとることができました。今後に生かすことができそうです。ありがとうございました。

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