最新更新日:2024/04/25
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11月12日(土)13:30より第8回セミナーを実施しました。

  11月12日(土)13:30〜15:30に第8回セミナーを愛知文教大学ABUラウンジにおいて実施しました。講師には、学び合う学び研究所フェロー 松村 美奈先生をお招きし「現代につながる江戸時代の教育事情」をテーマに行いました。
 松村先生の専門は江戸時代の文学です。さらに中・高等学校での教員経験があります。そうした立ち位置から、今回のセミナーの目的を「江戸時代の文学に描かれている、その時代の学びを見ていくことから、現代の教育へのヒントを考えたい」と話されました。
 まず、「江戸の教育力」大石2007より、江戸時代のキーワードとして、「文書なしでは成り立たない社会へと発展した」と確認されました。江戸時代の教育は、儒学を学ぶ武士については、多くの研究者により研究が進められている。ところが、江戸時代中期以降、寺子屋の発達から、庶民の教育が全国に普及してきたことが、残された書籍の分析から明らかになったと話され、セミナーがはじまりました。大学近隣の小牧市、春日井市にも当時の寺子屋に関する資料が残っているとの紹介がありました。

1.庶民の教育
(1) 百姓伝記(三河国豪農の農書)1680より
(2) 社会的変化のニーズによる、読み書きが求められる時代
(3) 海外からの見た日本人の学び
  ポルトガル人宣教師「日本覚書」・「日本巡察記」より
  オランダ人東インド会社船の料理人「日本大王国志」より
(4) 江戸文学が教科書に掲載されない理由と「学び」の記述
  井原西鶴「西鶴織留」には、学びに関する記述を読みとることができる
(5) 元禄時代の寺子屋が社会的存在として認められていた。
(6) 出版文化の発達(写本から大量印刷へ)本が広域へ広がる
  木版印刷の彫師が1ページ彫るのに一日半かかったが給料は?
  売れ筋の本は? ➡ 往来物=寺子屋の教科書

(7) 草双紙「寺子短歌」の挿絵を見てみよう(グループワーク10分)

6つのグループに寺子短歌の場面が配布され、何が書かれているかを読み解いていく。

休  憩

(8) グループの学びを共有する
 各項に描かれた情景の読み解きについて発表を聴き、寺子屋短歌を一冊の本としての内容を共有しました。学び合いからわかったことは、意外にも自由で闊達や子どもたちの様子を知ることができました。

2.寺子屋について
(1) 「寺子屋」という語について
1⃣「俚言集覧」(寛政)に「寺子屋」「手習師匠」の記述が残っている
2⃣ 貝原益軒「和俗童子訓」(宝暦)に「文字を知らざれば用をなさず」の記述が残っている。
3⃣ 湯浅常山「文会雑記」(江戸中期)「退屈なきようにさすること、第一のことなり」と書かれており、現在の教師が「どっきり」するような記述が残されている。
4⃣ 江村北海「授業偏」には、家庭教育の記述があり、「旅の土産には本を購入した。お年玉は本に限る」など、家庭における本の価値が見える記述が残っている。
5⃣ 滝沢馬琴(読本作家)は生活のために寺子屋を経営していた。
6⃣ 師匠との関係は、個人的な関係だった。
7⃣ 寺子屋の学習は、「教え込み型」➡「滲みこみ型」であった。
8⃣ 指導方法は、「教え込む」➡「教えない」教育法であったようだ。
9⃣ 江戸時代の本質的な価値 ➡「文字・知識教育+非文字教育(横断・統括)」
🔟 教育の目的 ➡「子どもを一人前にすること」

3.往来物=教科書として使っていた
 〇手習いの手本として(書くため)
 〇読書用のテキスト=素読(読むため)
 「往来」の用語=そもそも、庶民が文字学習をするのに、手紙の往来(往信と返信)が不自由なくできるところから生まれた。江戸時代の往来物は約7000種類もあるという。

 松村先生のコレクション(往来物)に直接触れる機会を与えていただきました。
グループに数冊の400年前の実物(木版印刷された和本)が配布され、手に取ることができました。

 〇書き言葉による共通の文字文化の成立によって、近代国民国家が成立するための文化的前提となった。
往来物の分類
 〇「世話字往来」(安永)とは、幼少期の礼儀作法の心得を説いた。
 〇「風月用文章」(寛永)とは、四季の行事や風物を題材とする。
 〇「増字消息往来」(安永)とは、手紙の別称で、家庭生活全般の用語集
 〇「商売往来」(元禄)とは、商取引の記録、生活関係語彙集としての役割も。

4.まとめ
江戸前期   ➡大量印刷出版の到来から、文字社会の成立
江戸中・後期 ➡享保の改革により教育にも改革が
        地域・身分を超えて国家規模で寺子屋が展開
       ➡庶民自身の主体的に学ぶ姿勢の獲得
       ➡往来物の拡充 ➡教育力の推進、知的基盤形成
 松村先生のお話の中で、「現在の『学び』に画一化されて息苦しさを感じることがあるが、江戸の学びには、『純粋に学びたい、知りたい』という子どもたちの動機が大切にされている。江戸時代の学びに、教育の大切な原点を見た。」との言葉が印象に残りました。

参加された方からの振り返りを紹介します。
◆セミナーの中で重要だと思ったことは「学びには『学びたい』という純粋な動機が必要」です。寺子屋の成り立ちを通して、日本が諸外国と比較して文字文化の色合いが強い理由がわかった気がしました。武士だけに限らず庶民にまで文字を読むことが広まることで、文字(出版物)を通して、様々な文化や習わし、あるいはマナーやマニュアルが浸透していったことが、今日の日本人特有の気質といわれている「ルールを守る」「礼儀を重んじる」「他人に親切」などにつながっていったのではないかと考えました。また、庶民が読み書きだけでなく教養として芸術的分野まで習うことができたのは、江戸時代が平和で安定していたからこそ成り立つものであり、いまさらながら徳川時代の功績の大きさに驚かされました。松村先生、たくさんの学びをありがとうございました🔟
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